【学習心理学】日常例をもとに心理カウンセラーが詳しく解説!
皆さんこんにちは。
今日は【学習心理学】についてJADP認定心理カウンセラーの私が詳しく解説していこうと思います。
学習と聞くと「テストに備えて学習時間を増やした」であったり、「ロシア語を独学で学習した」というように、学習=勉強という意味で使われることが多いと思います。
しかし、心理学の分野では、本を読んで価値観が変わった、とか嫌いな食べ物が食べれるようになったなどでも学習と言います。
ここでは心理学でいう「学習」とはなんなのかについて日常例を出しながら説明していこうと思います。
学習とは
心理学でいう「学習」とは、「経験によって生じる一時的でない心理的機能に関わる行動の変化」などと定義されます。
自転車に乗れるようになったというような外から見てわかることはもちろん、考え方が変わったり、知識が増えたり外からは観察できないようなことも学習の中に入っています。
こうして考えてみると、私たちは日々たくさんの学習をしていることがわかります。
例えば、「他の人との付き合い方」であったり、「美醜の感じ方」、「感情の表し方」なんてのも学習に入るでしょう。挙げていけばキリがありません。
一方で、学習によっての行動ではないものもあるということも知っていてほしいです。
それは、「熱いものに触れたら手を引っ込める」や「思春期になったら髭が生えてき始める」などです。
これらの体の変化は生まれつき備わっているものや、成熟のプログラムの中で自然に発現したりするものであり、経験を通してのものではないので学習とは言いません。
また、「お酒を飲んだら、明るくなる」といった一時的なものや、「筋トレで体がムキムキになる」なんていうのも一時的であったり、心理的機能に関わるものではないので学習ではありません。
2つの条件づけ
ここからは日常例とともに学習がどのようなメカニズムで成立するのかを考えていこうと思います。
古典的条件づけ
まず一つ目が『古典的条件づけ』です。
皆さん今までで、「梅干し」とか「レモン」と聞いただけで、勝手に唾液が出た経験をしたことがあるんじゃないでしょうか。
梅干しを口の中に入れると、その酸味に対して唾液が分泌されるのは生まれつき備わったごく自然な機能であるけれど、「梅干し」と聞いただけで唾液が勝手に出てくるのはどうしてだと思いますか。
これに似たもので小さい子供が白衣のお医者さんをみただけで泣いてしまうということがあります。
このように、本来その反応を引き起こすはずのない中性刺激に対して反応が生じることを『古典的条件づけ』と言います。
ロシアで行われたパブロフの実験では、犬に餌を与えるたびにメトロノームを鳴らすという単純な実験なのですが、数日もすればいつの間にかその犬は、メトロノームの音を聞いただけでよだれが垂れて餌を待っていました。
このパブロフの実験では、餌を無条件刺激、唾液の分泌を無条件反応といいます。
消去と般化
ここまで説明してきた古典的条件づけについてですが、古典的条件づけは、いったん条件反応が起きたとしてもしばらくやらなくなると条件刺激を呈示しても条件反応は起こらなくなります。
この現象を「消去」といいます。
また、メトロノームの音で唾液を分泌するようになった犬が、別の時計の音でもメトロノームの音同様、唾液を分泌させる働きをさせることがあります。
これをメトロノームの音が時計の音に「般化」したといいます。
道具的条件づけ
二つ目は『道具的条件づけ』です。
こちらも簡単な例で挙げるとするならば犬が「お手」や「お座り」をするよう形成されることだと言えますが、ここでは「スキナーの箱」という実験装置を紹介します。

スキナーの箱というのは、カゴの中にネズミを入れ、その中にはレバーが一つとそのレバーを押すと餌が出る仕組みが備え付けられた装置を作成しておきます。
初めは何もわからず、ただうろちょろしているだけのネズミですが、やがて空腹状態になり、餌を探し始めます。
いろいろな場所を探っていくうちにレバーを押すと餌が出てくるのを発見すると、その経験を活かし徐々に、空腹状態の時にはレバーを押すまでの時間が短くなっていきます。
そして最終的には餌が欲しいタイミングにレバーを押すことができるようになるのです。
また、その反応とは逆にスキナー箱の床からマイナスな刺激である電流が流れるようにしておき、レバーを押した時だけその反応が止まる、といった装置にネズミを入れてみます。
するとこれも先ほどと同じようにネズミがレバーを押すまでの時間は徐々に短くなり、レバーを押す=電気が止まる、というように学習していくわけです。
このように、餌や電流のように刺激を伴い、反応頻度に影響を与える働きを「強化」といい、餌などの報酬のような刺激を「正の強化」、逆に電流のような刺激を「負の強化」といいます。
古典的条件づけと道具的条件づけの違い
この二つの決定的な違いは、
古典的条件づけは自発的な行動ではない反応だということに比べ、道具的条件づけは自発的に行なっている点です。
無条件での反応と自発的・意識的に学習できる反応だという違いを覚えておきましょう。
その他の学習方法
その他にもいくつか学習についての方法があるので、解説していきます。
観察学習
観察学習とは、他の何か見本になるようなものを観察してその行動を身につけることです。
幼稚園児が、親がやっていることを真似したり、アニメのキャラクターと同じような行動をしようとすることをいいます。
観察学習というのは、環境によっていい面にも悪い面にも働きます。
例えば、暴力を直接みた子供は、暴力行為を観察したことがない子供に比べて暴力的になることがわかっています。
子供というのはそんなところまで、と思うぐらい色んな人のいろんな行動を観察しているので、十分に気をつけましょう。
洞察学習
洞察学習は見通しによる学習のことをいいます。
例としてチンパンジーの実験を挙げます。
チンパンジーが手を伸ばしたり、ジャンプしただけでは届かない場所にバナナを設置します。そしてチンパンジーがどのようにしてバナナを手に入れるのかを観察します。
すると、数匹のうちの一匹が閃いたように近くから箱を持ってきて箱に飛び乗り、そこからジャンプしてバナナを手に入れるということをしたのです。
これからわかるように、箱を使うということは試行錯誤してやったのではなく、バナナを手に入れるという目標に向けて、どうすれば手に入れられるのかを予測し、行動したということです。
これを洞察学習といいます。
まとめ
最後にここまでの説明をまとめてみましょう。
- 心理学のいう「学習」とは、「経験によって生じる一時的でない心理的機能に関わる行動の変化」である。
- 古典的条件づけと道具的条件づけという2つの条件づけがある。
- その他にも「観察学習」や「洞察学習」といった学習方法がある。
学習というのは人間生きていく上でとても大切であると共に環境によっては学習方法や学習内容に偏りがあったりする場合があります。
日々生きていく中で、学習するということを頭の片隅に入れていつもしている行動をしたり、少し変化を加えてみたりするといいでしょう。