朝井リョウは、2009年に「桐島、部活辞めるってよ」という作品で第22回小説すばる新人賞を受賞し、デビューした小説家です。
今回は、「桐島、部活辞めるってよ」を含めた朝井リョウの魅力が伝わる5つの作品を紹介していきたいと思います。
桐島、部活辞めるってよ
普通の高校生活を送っている5人の日常を描いた小説。
各登場人物はそれぞれ悩みや秘密を抱えており、それを隠しながら表面的な付き合いで日々の生活を送っていた。しかしある日、男子バレーボール部のキャプテンだった桐島が部活を辞めることをきっかけに5人それぞれに些細な変化が起こります。
この作品は朝井リョウ氏の処女作であり、代表作といえる一作。
誰もが人には言えない秘密や悩みを一つや二つ持っているが、この作品では特に思春期真っ只中の各登場人物の心理的な部分が細かく描かれているところがこの作品を読み進んでいくにあたって面白い部分です。
また、タイトルにも出てくる桐島については作品中に直接登場することはなく、その人物像を想像するのも読み進めていく中での楽しみの一つです。
・ページ数 245ページ
・出版社 集英社
・第1刷発行 2010年2月5日
・ジャンル 青春小説
ままならないから私とあなた
あなたが見ている世界は本当に「正しい」世界といえますか?
話を読んでいくにつれ物語だけではなく今自分が生きている現実世界にある「正解」が何なのか。
目の前にあるもの、人間関係、人生観、全てにおいて疑心暗鬼になり、自分が思う正しさというのを見つめ直すきっかけになった一冊です。
成長とともに無駄なことは切り捨てて暮らす天才、薫と無駄なことこそ人間としての柔らかさや温もりがある、と考えている雪子。
すれ違う友情の中でどちらが正解か不正解かなんてものは分からない、価値観の違いに悩み苦しむ人間関係が描かれているため多くの人の共感を得た朝井リョウ氏オススメの作品です。
また、表題の「ままならないから私とあなた」というストーリーとは別に「レンタル世界」という短編小説があり、こちらもまた人間関係をレンタルすることをいいと思っていない主人公が真逆の考えを持った女性に惹かれ、自分の考えを見つめ直すことになり、その中で何年もの間気づかなかった衝撃の事実にたどり着くという、短編小説でありながら複雑な人間関係が事細かに書かれた内容で非常に読みやすいです。
・ページ数 294ページ
・出版社 文春文庫
・第1刷発行 2019年4月10日
・ジャンル フィクション
世にも奇妙な君物語
この作品は、多くの朝井リョウ作品の中でも少し変わった作品です。
朝井リョウが書いた小説は細かい部分まで人間関係が描写された作品が多く、感動や哀しさといった感情が動かされることが多いが、
この作品は一言で言うと「面白い」
5つの不思議な世界観で描かれたストーリーの細部にまで伏線が多数張られており、先の読めない展開になっていてどんどんページをめくっていってしまう一冊。
読み進めば読み進むほど気になる行動やセリフが無数に伏線として貼られており、後半読み進むににつれてどんどん紐解けていく奇妙で面白い本となっています。
読んでいく途中で、「前のページのあのセリフ!」
となって前に戻ることもしばしばあり、この本を読むにあたって気になった発言や言動を付箋などでチェックしながら読みすすていくのもこの本ならではだと思います。
伏線回収が好きな方には特にオススメの一冊です。
・ページ数 325ページ
・出版社 講談社
・第1刷発行 2015年11月19日
・ジャンル 小説短編集
世界地図の下書き
どうしようもないことが生きていく中で数え切れないほどある。
物語の中心となる、幼い頃に両親を事故で失った太輔をはじめ児童養護施設「青葉おひさまの家」で暮らしているさまざまな子供たちが日々暮らしていく中での葛藤に立ち向かう様子をそれぞれの主観から描かれている作品です。
逃げるということは、マイナスな行動ではなく、これからどんな方向にも道を開けていけるようなものだと教えてくれた、そんな一冊でした。
実際に私の友人に児童養護施設から学校に通っている人がいたのですが、その友人はいつも笑顔で前向きな性格の持ち主で、過去の辛かった体験や思い出を笑い話に変える、そんな友人です。
決して楽しい思い出ではないのに話す友人に初めは戸惑いを隠せなかったのですが、この本を読み進めていくことでその友人への理解が少し深まり、今では関係もとても深めることができました。
自分ではどうしようもできない過去や未来に葛藤する子供たちのストーリーをみていると複雑な感情になりますが、読み終えた時には、もやもやした気持ちではなく心が清々しい気持ちになる、そんな小説です。
・ページ数 365ページ
・出版社 集英社
・第1刷発行 2013年7月10日
・ジャンル 国内小説
死にがいを求めて生きているの
今回のおすすめ本5選の中で一番ボリュームのある一冊です。分厚さを見ると少し手を出しづらい本ですが、タイトルを一目見ただけで読書好きの私は手に取りました。
なぜ人は生きているのか?
本気ではなくても、少なからず人生で一度は考えたことがあると思います。
そして、答えはない、そう思って考えるのをやめたのではないのでしょうか。
この本にももちろん正解なんて書かれていませんが、私にとって朝井リョウ氏の表現力や言い回しが特に好きな本です。
対立や比較がないと自分自身を測れない、テストの順位や部活の勝敗にこだわるのに必死だった自分がいたのを思い出しました。
物語に登場するのは、植物状態となって入院中の青年、智也と、彼を見舞う雄介。
幼少時代からの彼らの様子が、章が替わるごとに視点人物を替え、第三者の目を通して描かれていくストーリーに引き込まれていきました。
・ページ数 473ページ
・出版社 中央公論新社
・第1刷発行 2019年3月8日
・ジャンル 心理フィクション
朝井リョウオススメ小説第二弾!!
